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大山、最晩年の勝負将棋。A級プレーオフ戦である。河口俊彦七段著『大山康晴の晩節』等、各書籍でも有名な局面であり、当時の控室では即座に大山必勝の△２一飛が発見されていた。しかし大山はこれを見逃す。
見落としだったのか？もしくは気になる順があったのか？

２０２２年時点で最新のソフト「水匠５」に解析させてみた。
既に大山有利の局面ではあるが、△２一飛に対する先手の候補手とその変化は以下のようになる。

【水匠５】(*検討時間 17:45.9 深さ 27/25 ノード数 1869182245）
【候補1】【 評価値 -355】 読み筋 ▲２三歩打 △５九飛打 ▲８八金打 △２九飛成 ▲５二歩成
【候補2】【 評価値 -470】 読み筋 ▲２六歩打 △６九飛打 ▲８八金打 △２九飛成 ▲５二歩成
【候補3】【 評価値 -488】 読み筋 ▲２四歩打 △５九飛打 ▲５二歩成 △７七桂 ▲８八金打

ソフトの示した変化は５手で割愛するが、いずれも２一に回った飛車を先手陣に成りこまず、下段飛車のままで戦う構想に注目である。
なお、【水匠５】では△２一飛の代わりに△６九飛、△４九飛、△５九飛などを推奨して、自陣飛車を動かさない構想を描いている。
今となっては真相は誰も分からないが、大山十五世名人も自陣飛車の価値が高いと判断して、敢えて△２一飛を選択しなかったのかもしれない。

▲７九角では本譜の順で攻め込まれるので▲５五歩のほうが良かった

２０２２年時点で、複数のソフトに解析させたところ、ここでは▲４六角という手があった。評価値としては、先手-100～-130程度だが、形勢は互角程度にまで振れている。
戻って、１９７手目、▲６九銀が悪手で形勢は一気に後手優勢となった。先に▲７九銀がソフト推奨の手で、これならまだ互角付近で先手も戦えていたらしい。
しかし、２００手を超える超手数の両者の壮絶な戦いの最中、この手が見えなかったから、といってもそれを咎める者は誰もいないであろう。

升田、△３五銀から圧倒的に有利に進めながらも大山流の二枚腰の受けで決め手を与えず。
△５一香が疑問手で、遂に形勢は互角付近にまで戻っている。
升田の疑問手より、大山の不利な局面を恐るべき受けの力に驚かされる。なお、２０２２年時点でのソフトの解析では△５一香ではなく、△８五桂や△６四桂、△５七歩成などが推奨されている。

【水匠5】*検討
【候補1】 [時間 10:29.0 深さ 30/32 ノード数 1,101,417,854]
【評価値 20】 読み筋 ▲９八玉(88) △２四角(13) ▲同　飛(27) △３四金(43) ▲２八飛(24) △４五金(34) ▲同　銀(56) △３九飛成(32) ▲１八飛(28) △４五歩(44) ▲５三歩成(54) △４八と(49) ▲４三角打 △７九金打 ▲同　金(78) △同　龍(39)

△８六歩では△７八角と単純に打ち込むほうが良かった。以下▲７四歩なら△８七角成▲７五飛△７四歩▲８五飛△同飛▲同桂に△１五歩の端攻めがあり後手やや良し。

▲４八飛では▲５六飛として△７八角成には▲８五歩△９四飛▲５五角としていれば先手良しだった。

△３三銀では△３三桂のほうが良かった。先手やや良し

△８四歩では△１五歩▲同歩△１七歩▲同香△１六歩▲同香△２五銀と端攻めするほうが良かったか

▲７四歩は悪手で龍を押し込まれることに。▲３三角成△同桂▲７二銀とするほうが良かった。

▲４四歩では▲７八飛として△７六銀なら▲３三角成△同桂▲６六歩とするほうが良かった。後手優勢に

△８四馬では△７六金▲５五角△９五歩▲７七歩△５四歩▲７六歩△５五歩▲８七龍△５六歩▲４七金△６六角とするほうが良かった。本譜でも後手良しだが差が縮まった。

▲５八金が敗着。△７六金を避けて先に▲６八角と引くか▲６七金なら後手やや良しながらそう差は無かった。

▲１六歩はいかにも緩手で▲８九飛と回って以下▲６五角から強行突破を狙えば先手良しだった。

後の△７六銀成が無いので▲同飛と取るほうが良かった。

ここで▲５二銀と絡んでいく手があるので△５四歩では△６三歩のほうが良かった。

▲７二歩では▲６五歩△７五金▲同角△同歩▲同飛のほうがまだ頑張れた。

△８四同飛では△８二飛とされるほうが先手は困っていた

▲６二とが敗着。歩成を防いで▲７三と△同飛▲８六飛ならまだ後手良しながら僅差だった。

▲４六桂では▲６四歩△同金▲７三ととすべきだった。後手良しに